5月7日(日)にフランス大統領選挙がついに決着を見せた。
フランスでは最年少大統領の誕生だ。既存の政党から離党したが、EUとの協調姿勢を鮮明にしていたマクロン氏が3分の2の得票を得た。右派のルペン氏は落選だ。
★アウトサイダー的な右派の躍進か?
極右という言葉でも語られる。正直なところ、ルペンより極端と思われる言論はあちらこちらで見かける(どこでみかけたとはいうつもりはない)。とはいえ、他の右派とは異質なものとしてみられていると思う。本当に、右翼と定義できるかなんて僕が出来るわけないので、とりあえず「極右」と括弧付きにしておこう。
このところ、第二の万里の長城を作ろうといってみたり、中東圏の国からの入国を拒否しようとしてみたりする為政者が当選した。イギリスでは、EU脱退の国民投票が通った(今までの右派はEU路線だった)。フランスでは、いわゆる「極右」勢力がEU脱退を主張するし、欧米では「極右」政党がそれぞれ似たようなことを発信している(のを見かける)。
イギリス→アメリカと「極右」が支持を得て実際に結果を出してきた。そして、さあフランスはどうなると注目されていたわけである。ところが、ルペンは決選投票に進むも勝てなかった。流れとしては一旦落ち着くということになりそうである。
★不満の表れ
とはいえ、フランスの大統領選挙の決選投票は過去2番目の低投票率(それでも74%であり、日本の国政選挙である55%前後に比べれば高い)だったという。これには、マクロンへも不満があったということの現れのようだ。つまり、ルペンもマクロンも嫌だという有権者がいたということである。また、マクロンに入れた人でも「ルペンだけはダメ」という理由で投じたのであり、マクロンを支持していたわけではないという立場が相当いる。
なにか、昨年のアメリカ大統領選挙のクリントンへの反応を思い出してしまう。クリントンが「ゴールドマンサックスから講演料をもらっている」と批判され散々叩かれたのは記憶に新しい。マクロンも恐らく、2大政党ではないだけで「主流派」とみなされている可能性が高い。
★不満の声はどこに流れるか
労働者などに不満がたまっているようだが、当然「極右」と呼ばれている勢力に流れている。しかし、既存の中道左派より左寄りである「強硬な左派」にも流れているようである。実際、アメリカやイギリスでは「強硬左派」の候補への支持が集まってニュースになっている。
不満の行き着く先は、反主流であるこの2つが主な感じがする。しかし、この2つの立場が目指す方向は全く違う。
「極右」はまさに「自国ファースト」だ。これを前提にして、移民規制・貿易における保護主義を主張する。自国の判断に介入するEUからは完全離脱すべきという結論に達しやすい。この先、いわゆる排外主義を強めてもや他国との紛争で強硬な姿勢(軍事を含めて)をとったとしても、統一して理解することは出来る。
アメリカのTPP離脱もこの延長で一応説明は可能になりそうだ。
「強硬な左派」は、「自国ファースト」かというとそうではない。普遍的に人権を保障するという立場とは親和的だろう。実際、イギリスの強硬左派である労働党現党首は移民規制を支持しなかった。これを「自国ファースト」で説明はするのは無理である。貿易の保護主義も、自由貿易が低所得者一般に必ずしも恩恵を与えないから主張しているのだとすれば、理解可能である。
EUへの懐疑論といっても、EUから即時脱却かといわれると玉虫色である。これも、人権という観点からすれば、経済分野以外ではEUとは親和的な可能性もあるからだろう。この微妙な態度も説明できなくはない。
また、安全保障政策も強硬な手段を嫌う。イギリスの労働党現党首は自国の核軍縮を主張している。これも、「極右」と同じ論理で説明することは難しい。
★ポピュリズム?
とはいえ、両者ともポピュリズム的な要素を指摘される。逆に、今までの主流の立場はエリートだと言われることもあるだろう。新聞社の報道は、全般的にポピュリストに厳しい論調が目立つように思われる。
確かに、ポピュリズムには感情や情緒が暴走する側面は否定できない。しかし、エリート主義一辺倒では、「一般人は口を出すな」になってしまう。どちらの要素もよく働く場面も裏目に出る場面もある。一概に評価するのは避けた方がいいと思う。ただ、現在裏目に出ている場面は存在していると個人的には考えている。
★これからの行方は…
全体的に、中道に属する人が減少しそうな気配はある。その分、アウトサイダーに支持者が流れているし、しばらくこの傾向は続きそうだ。ただ、これはあくまで欧米の話である。
欧米は重大な岐路にある。僕は、経済政策云々が重要であるかは否定しないが、本当のところ「移民規制」への態度が今後の方向性を大きく左右しそうな感じがする。仮に移民を規制して、誰を救い誰を救わないかをはっきりと選別するのであれば、それはもう普遍的な人権保障から「おさらばする」ということだ。当然、EUとしてまとまることはもう難しくなる。現にそうした動きはある。
「選別するのは当然だ」という意見は出てきそうだ。もっとも、「あなたが選別される側にまわったときにどうするのか」という問がそこには出てくるだろう。
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