スーツ氏・最長往復切符は「最長」ではなかった

 この度、スーツ氏から自らの実施していた最長往復切符が「最長になっていなかった」という発表があった。

 その前に、別に「最長往復切符」と称して旅を開始された人が居り、ルートが違ったため当アカウントでは、既にそのような事態になっているのではないかとかんがえ調査に着手していた(6月18日夜9時頃)。

 しかしスーツ氏から着手した直後に連絡があり、調査結果の公表はこの時点まで先送りを決定した。その後、スーツ氏からの発表が終了したため、検証記事を公開する。



発表内容の趣旨について~本当は違った!?


要は、「東北エリアについてより長いルートが見つかったので自らのルートは最長じゃなかった」というものである。

新青森~仙台までのルートなのだが、東北新幹線を新たに経由することで変わるのだというので、実際に検証してみた。


変更があったのは東北エリアのみだが、片道あたりを合計すると以下のとおりになった。


スーツ氏が発券したもの:11018.4キロ 
新ルートとされるもの:11027.2キロ  


=新ルートが8.8キロリードした

以上のことが、管理人の調査でも明らかになった。


※合計については、手元には最長片道切符用の距離データがあるため、稚内→肥前白石の片道に加えて肥前白石~肥前山口までを加算した値を比較に用いた。最長往復切符は基本的に最長片道切符のルートを往復するものだからである。しかし、このところは稚内⇔肥前山口にすると現状では諫早・早岐を経由できないため、肥前山口のとなりの駅と稚内を往復すると往復切符として一番距離が長くなる。


参考までに当アカウントの管理人が実行した2015-05-30最長片道ルートの値を同じ方法で算出したものは以下のとおりだ

2015-05-30最長片道ルート:10995.2キロ 


管理人が実行したルートはその当時正解とされていたルートを採用したものである。http://www.desktoptetsu.com/saichohensen.htmに掲載の情報を基礎に、ルート票を自ら作成・検証したものである。同時期に実施した人が複数存在し、それらの券面とも一致しているので正しいとみてよい。



スーツ氏らのルートは管理人のルートより長い理由


しかし、スーツ氏らのルートは管理人のルートよりいずれも長い。北海道新幹線の開業は距離を短くする方向に機能しているのでこれが理由ではない。スーツ氏らの切符の違いはルート選定の際に対象路線の出発点が異なることがその答えである。


~最長ルートの検索対象の違い~

☆管理人ら(他伝統的に実施されていたルートの多数)

JRの路線のみを対象にした最長ルート


☆スーツ氏ら

連絡運輸規則を使いIGRの岩手~好摩の区間を追加した上で検索したルート


つまり、対象路線が1区間増えたことにより、スーツ氏らは片道当たりのルートを増加させることが出来たのである。今回「最長」でなかったことが発覚したスーツ氏のルートも管理人の実施した2015年版のルートを上回っており、当初は管理人も「IGR追加版の最長ルート」と一応は推定していたのである。




なぜこのような事態が起きたのか?~震災

☆数学的に答えを出さないと間違いは起こる

そもそも、こういったルート検索は専用計算式を作り、旧式のExcelを所持している人に限って数学的におおよそ誤りのない答えを導き出せるものである。先ほど紹介したリンクもそれに従って作成されたルートとして信頼の置けるリソースである。


つまり数学的に作れば間違いのリスクは少ないが、そうでない限りは間違いのリスクは常につきまとっているとかんがえなければいけない。


最長ルートは常に「推定」がつきまとう。ただ、これは一般論で有り、今回の直接の原因ではない。


☆直接の原因=東日本大震災

これが今回の事態を招いた答えであろう。この大震災の影響で、岩手県内に現在も不通区間が存在する。この不通区間は最長片道切符のルートになっている区間である。しかし、不通区間のためそこを通る乗車券が発売されない。


そのため、その不通区間を避けて短絡して206キロ短縮となった乗車券が発売されているケースばかりなのである(1例それでも発券された場合もあるようだが例外)。スーツ氏も御多分に洩れず短縮された乗車券が発売された。


したがって、スーツ氏は東日本大震災が起きていなければ、まずその206キロを追加できた。

さらに、連絡運輸はJR→IGR→JRと1回しか挟めない。東日本大震災で宮城県の区間にBRTが存在しているが、ここを通ると連絡運輸の扱いになり、JR→IGR→JR→BRT→JRが不可能であることがスーツ氏の発券状況や管理人の調査から明らかになっている。

すると、BRTは震災前は通常のJR区間だったためこの区間も追加するとさらい追加することが出来た。ちなみに、管理人の実施したルートも206キロ追加されるので以下のようになる。


スーツ氏:11296キロ

新ルート:11099キロ 

管理人:11201キロ 


新ルートもBRTの区間を算入できるので距離を伸ばしたが、

スーツ氏のルートはおろか管理人のルートにも届かないという計算になった。

つまり、東日本大震災によって暫定ルートが出来るのだが、この際に他のルートに抜かれてしまったというのが今回の結果なのである。

ただ、スーツ氏はどうやらさらに長いルートを考案した様子である。

新提案があればその都度ルールを満たしているか、ルートに矛盾がないか、キロ数に誤りがないかは随時検証記事を書いていく方針である。



JR版は大丈夫なのか?~可能性は高くない

すると、JR版でも同じことが起こるのではないか…というのが自然な「心配」だろう。

しかし、管理人は現時点では、JR限定版の推定ルートは動く可能性は低いとみている。


その理由はJR限定ならIGR区間を使うルートは全てダメになるから


実は、IGR区間が使えないことで「出来ない手法」が存在する。

実際に何が出来なくなるのか今回IGRを含んだ新ルートの一部を拾ってかんがえてみよう。


☆IGRなら可能

今回の新ルート(抜粋)

新函館北斗

↓ 北海道新幹線

新青森

↓ 東北新幹線

盛岡

↓ IGR

好摩

↓ 花輪線

大館

↓ 奥羽本線

川部

↓ 五能線

東能代

↓ 奥羽本線

秋田経由横手


このようにIGRを加えることで、東北新幹線で一旦盛岡を経由してから再びIGR・花輪線で青森県へ戻り五能線を経由して再び秋田県から東北地方を南下するルートになっている。


実は青森県へ出入りする鉄道のルートは4つしかない

1.東北新幹線 盛岡~新青森 ○
2.IGR・花輪線 盛岡~好摩~大館 ○
3.奥羽本線 東能代~秋田 ○
4.秋田内陸縦貫鉄道 角館~鷹ノ巣 ×


しかし4.は連絡運輸の規則上今回の最長ルートを考える際には対象外である。そうすると、3本になる。今回の新ルートは1→2→3と3つのルートを全て使ったことがわかる。

※ちなみに同じルートを2度使うと片道乗車券として成立しないのでゲームオーバーが確定する(あくまで「片道のルート」の話なので)。だからこそ、ルートの数が決定的な違いをうむ。


☆JR限定では選択肢が減る

JR限定となると、IGRが使えない。そうすると、東北新幹線と奥羽本線でしか青森県と出入りすることが不可能になる。

2本しかルートがないので、青森県を出て→入って→出るという手法がとれない。

つまり一度、青森県内を出てしまうと後戻りが出来ないことになる。


例えば、盛岡まで新幹線に乗ると青森県内に片道乗車券で戻るには秋田から東能代に上がるしかない。でも、東能代に上がってしまうと2本のルートを両方使ってしまったことになる。したがって、もう一度南下するという選択が出来ず片道乗車券が打ち切りになってしまうのだ。


ちなみに、JR限定の最長ルートの北東北を抜粋すると以下のようになっている。

新函館北斗

↓ 北海道新幹線

新青森

↓ 奥羽本線

川部

↓ 五能線

東能代

↓ 奥羽本線

秋田

↓ 羽越本線

坂町

↓ 米坂線

米沢

↓ 奥羽本線

大曲

↓ 田沢湖線

盛岡

※盛岡からは宮城県方面へ下っていく


このように、五能線エリアを経由して秋田へ下りあとは秋田以南を周遊する展開になっている。もしも新青森東北新幹線を選択すると、五能線エリアの200キロ前後の距離を丸ごと放棄することになる。また田沢湖線も捨てる可能性が高い。最長ルートが特定のエリアを放棄するのはいかにも不自然である。


最終的には数学的に他の主張が出てくる可能性はある。しかし、数学的にも実質的に対象ルートが減れば、距離が減ることはあっても増えることがないとされている。そう考えると、やはりJR限定版は今までの様々な人間によって、データと信頼が蓄積されていることも有り、今回のような事態に陥る可能性は高くないと思われる。


また、今回はIGRを本格的に入れたケースとしては初めてだったと思われ、そうした要素が原因したところもあるだろう。多くの人によって検証作業が続けられることでルートとしての信頼性が高められていくことを期待する。



次の大改変は2018年4月1日の見込み


さて、2018年4月には三江線の廃止・山田線の三陸鉄道への移管が既に予定としてセットされている状況だ。


山田線については、不通区間が復旧するのだが、同時にJRではなくなる。-206キロの原因を作っていた区間なのだが、正式にJRから外れることで、管理人が実行した券面は暫定から正式扱いになる…ということで券面の中身は基本的変化しないので参考情報だ。


より重要なのは、三江線の廃止だ。これにより1982年以来、35年にわたって変更のなかった中国地方ルートが白紙改定になる。

残念ながら、PCやソフトの入れ替わりも有り、手元では数学的な計算を作れない。ただこのあいだ更新したブログの通り


現時点では10827キロ前後を見込んでおり、現状からすると140キロ程度の短縮になる

※詳細は:https://683-shirasagi7.amebaownd.com/posts/2550500

という予想だ


今後も新しいルートの提案があれば随時検証していきたいと思う。



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