2日目:イレギュラー
朝は5時半前の起床である。宿泊していた安ホテルの方が、本来は6時からの朝食を早めに振る舞ってもらえた。僕の出発時間を聞き出して、粋な計らいをしていただいた。
こういったケースあるいは「本当はそういうこともできるよ」といわれたことはこれ以後今までの間に何度もあった。どこかぬくもりを感じる瞬間だ。とはいえ、大概は大手ではないホテルや旅館で見受けられることなのだが。
午前6時頃出発の普通列車に間に合った。室蘭線を岩見沢へ向かう。
列車は出発したけれど、相変わらず車窓は闇だ。
沼ノ端を過ぎて、追分へ向かう途中でようやく空が白んできた。
苫小牧とは打って変わって、雪原が姿を現した。駅に着くと、高校生が順番に乗ってきた。追分を過ぎて栗山あたりまで列車が北上すると、いよいよ満席近くになってきた。窓からホームを見ると、乗り込もうとする学生が長蛇の列を作っていた。
ワンマン列車だったので、乗降は一番前のドアだけだ。乗るのにものすごく時間がかかる。おまけに列車の中はラッシュに近い状態になっている。それでも、乗っている学生は空いている席を詰めたり、通路の奥に行こうとしたりする様子は全く見られない。そのため、新たに乗ろうとする学生がいつまでたっても乗れずに、列車が遅延しだした。
結局、岩見沢に着いたときには5分ほどの遅れになっていた。すっかり朝だ。そして、雪景色だった。
*
次に向かうのは深川である。しかし、普通列車がない。仕方なく、滝川止まりの普通列車で滝川へ降りた。でも次の深川行きは3時間待ちだ。
改札を出て駅舎を出ても、どうやらやることはなさそうだ。仕方なく待合室へ引き上げた。持ってきた小説があったのでそれを読んだ。やっぱりという感じだが、完全に1冊仕上げてしまった。
軽く余韻に浸りながら、深川へ向かった。
深川で降りると、留萌本線は13時の列車から運転再開になることがわかった。滝川の段階でも現在運転見合わせで再開の可能性はあるという状態だった。雪国だからこういったことは当然ある。この後通る予定の石北本線もまだとまったままだ。
とりあえず昼飯を買った。
旅行への不安もあるのだろうか、そこまで食欲があるわけでもなく十分満足していたのを覚えている。逆に少ないなら少ないなりにじっくり味わうという癖もつく。
いつも食べているものですら、新鮮に感じることもある。
そして、留萌線の普通列車に乗り込んだ。留萌まで峠を越えて、増毛までは海沿いを走る。
今は留萌~増毛はもう鉄路でない。この日も乗客はわずかだった。
こうしてみると、雪景色の風景は案外と明るいことに気付く。
雪と海の組み合わせをじっくり見るのは初めてだった。思わず僕はデジカメのシャッターを切っていた。
増毛駅に着いた。駅舎の中には店もあった。
留萌線を深川へ戻ると、もう夜のとばりが降りていた。この時期の北海道は昼間が実質8時間くらいだと思った方がいい。午後2時には夕焼けのようなものがみえはじめ、午後3時半には日没まで秒読み段階に突入し、午後4時からは夜だと思うのが賢明である。
再び滝川まで戻って、今度は根室線で富良野そして富良野線で旭川へ出る。
今はなき、711系の国鉄車に乗った。随分久々に乗ったなあと思っていたけれど、多分この時が最後の乗車だったと思う。そして、僕の手元にあるほとんど唯一の711系の画像が見つかった。
滝川へ戻った。夕飯を手に入れようとしたけど、どうやら手遅れだったようだ。店がほとんど閉まっていた。唯一、ぎりぎり営業していた100円ショップで何とか食べられるものを手に入れた。
その直後に、残念なお知らせが入る。それは、翌日上川~網走の石北本線が運転見合わせになるというものだった。上川への宿泊が不可能になった。キャンセルの電話を入れるときに、もう少しでトラブルになるところだった。今度からは、個人営業の宿泊施設も気をつけないければいけないと感じた。というか、宿泊の予約自体、タイミングが早すぎたのだと思う。
となると、代替のルートを調べなければならない。急いで時刻表を取り出した。
翌日は、川湯温泉に止まる予定だ。釧網本線(釧路~網走)の中間点だ。
こうなると、狩勝峠を越えて新得→帯広→釧路とまわるしかないだろう。石北本線を網走までいって釧網本線に入るルートは出来ないのだから。
時刻表を何度も調べると、旭川を午前5時40分に出ると、何とかなるようだ。
これに決めた。早速発生したイレギュラーだった。
旭川で慌てて予約したホテルにチェックインした。そこで追加で買った蕎麦を食べて、すぐにシャワーを浴びてそのまま布団の中に入った。
(次回へ続く)
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