そろそろ総括的なコメントを残しておこうと思う。
結果としては、自民が堅調で推移して与党が3分の2を再び確保した。野党は希望の党からさらに立憲民主が誕生したため票割れが起きた。ただ、希望の党が失速して立憲民主が野党筆頭になった。
1.得票率はそうでもないか?
結果的に自民が多数の議席を占めた。ただ有力な反論としていうほどの得票率を上げていないというものがある。とはいえ、これは既に指摘されているものだ。
これには、負け犬の遠吠えという批判があるが、旧民主党が多数を占めたときもいうほどの得票率ではなく一時の風で動いたのもまた事実だろう。負け犬の遠吠えとしてしまうと、旧民主党の完全勝利もまた承認することになることは注意しておきたい。とはいえ個人的には、一時の風で動いてしまう現行制度には懐疑的である。
もしかすると、読者には「自民は永遠の与党」と思っているのかも知れないが、永遠に続いた政権などどこにも存在しない。実権を握る勢力は必ず入れ替わってきた。いつかは野党に転落する日が来る可能性を想定しなくて良いというのはこれまでの歴史を振り返れば暴論に近いと思う。仮に一時の風で議席が動く制度を放置すれば、自分が野党になったときに大惨敗・壊滅のリスクを背負うことになってしまうのではないか。
2.自民党の政治力
別に完璧だというつもりはないが、やはりあったというべきだろう。だからこそ、前原氏あたりが真面目に保守二大政党制を目指したのだろうと思う。その結果野党の分裂を招いて自民党が勝利した。
しかし、こうした野党分裂は前原氏の判断能力に依存する部分もおおきい。やや便宜的かも知れないが、安保法制を違憲立法という認識で出発しても、その後に憲法九条を改正することは別途論じることが出来るはずである。だとすれば、社民あるいは共産との障壁は絶対超えられない代物ではなかったはずでこの先数年~5年くらいは継続的に連携できてもおかしくはなかった。
あるいは、希望の党という一時の風を頼ったのかも知れないが、風に頼るということは風がやんだ瞬間に沈没するということである。政権交代するにしろ、野党として国会論戦をかわすにしても、風に頼るだけではうまくいかないはずである。あまりにも前原氏(+希望の党に我先と移籍した元民進議員)の判断は近視眼的だったように思う。これは政治スタンス以前の問題だろう。
やはり野党、特に元民進議員の判断能力の欠如というのが今回の選挙結果をかんがえるときにまず考慮しなければいけないことだろう。
3.連携と野合の狭間
最近、野党統一候補を繰り出す戦術が野合であるというネタがあまり流れなくなった。
とはいえ、どこまで連携でどこから野合なのかという問題が消えたわけではない。
本来政党が違えば、理念や主張する政策が違うのは当たり前のことである。また、党内でも主張が違うという例はよくみられたことだ。かつての自民党がその例である。さらに、ネットでよく「左翼」と目されたであろう民進党だが、その実態は全く主義主張が違う人間が寄合所帯をなしていた「ごった煮政党」と考えた方がいい。そうでなければ、長島昭久氏のような右派から元社民党の辻元氏まで一緒にいた現象を説明できまい。
したがって、ある程度主張が違う勢力同士が一緒に選挙を戦っても直ちに野合批判になるわけではない。野合だというのであれば、当面の重要政策において賛否が全く一致せず、国会での連携がとれる見込みがほとんどないのに選挙協力をやる場合あたりを想定することになる。
そう考えると、希望の党が立憲民主だけでなく共産や社民と連携することはやはり「野合」批判が噴出したのではないのだろうか。自衛隊が本来的に合憲・違憲という話はさておいたとしても、2015年に成立した安保法制を運用すべきか・合憲かといった論点すらまともに一致していなかった。
一部で、希望の党のいるところに共産(社民の場合もあったかかもしれないが)が候補者を立てたのは…という批判も耳にした。しかし、立てなかったら立てなかったで野合批判を浴びた可能性はある。
4.長期追撃戦・長期撤退/後退戦
今回は自民党も比例が2000万票に到達しなかったという。とはいえ、若い世代からの支持は多い。そのため、長期的には得票が伸びる…少なくともおおきくは下がらないという状況が想定される。ただ、得られている支持が必ずしも積極的とは限らないというデータも存在する。どう支持をつなぎとめるか、消極的なものを積極的なものに変えるだけの説得力がつけられるかは大きなポイントである。
今回の選挙も勝利した。改憲が現実味を帯びてきている。自民党のコアな保守系議員の念願が叶いそうな情勢だ。
対して、リベラル勢力(立憲民主・社民・共産)は若年層からの支持が伸び悩んでいる。長期的にはさらに合計得票を減らす可能性がある。ただ、リベラル勢力は長期的な後退戦を生き延びて反転攻勢の機会をうかがう手法を確立しつつある。それが野党統一候補をたてることである。少なくとも当面は、票の分散を防ぐことで接戦区を中心に議席を維持することが可能になる。実際、希望の党がいなかった統一候補を繰り出した選挙区では与党候補に競り勝っている。北海道は5、沖縄や新潟で3選挙区をとった。長野や福島・東京などでも競り勝った結果30近くの選挙区で結果がひっくり返った。比例選でも統一名簿を作れば死票を減らして議席減をある程度は防止できる。
野党はじり貧という厳しい見立だが、今回統一候補をたてなければ国会で勢力を築くことすら困難な状況だった。自民党中心の政治が今後も続きそうだが、統一候補戦術で野党勢力はさらなる後退を防止することは出来た。2012年の総選挙程度にはなっていると思われる※。政局としては、自民の勢いとリベラル勢力の結束とのぶつかりあいが一大イベントなるだろう。
※2012年のリベラル勢力=67+維新・みんなの党の一部/今回=69+無所属の一部とかんがえられるので両者で大差はない。
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