さて、米山氏が女性問題を理由に辞任となったため、6月10日に知事選が予定されている。米山氏は2016年の選挙では下馬評では「厳しい」とされ、僕も「森・米山横一線で米山が負ける」と予想していたのだが外れた。そもそも米山氏が知事の椅子に座っていたこと自体僕にとっては「想定外」の話ではあった。
原発で揺れる
原発政策について、米山氏は選挙中もそして知事在任中も、特に地元の柏崎にある原発の再稼働について「検証が終わっていない」ということを理由に認めず、事実上反原発の政治家とほとんど変わらない結論を下し続けたことで有名である。原発の再稼働に慎重~反対の立場の有権者からすれば好まれたし、原発推進の立場からは特にネット上では呪詛に近いようなコメントまで見られた。知事が容認しないことには事実上再稼働は困難であり、日本の原発政策を左右する可能性があることから毎度注目されているのである。
原発の賛否は多々議論があることは承知である。個人的には(残念ながらかもしれないが)本来はどちらかの立場に明確に属している。ただ、それを開陳する(明らかにする)ことがこの記事の目的ではない。
しかし、1点だけ述べておきたい。
確かに原発の再稼働で電力を享受することが出来る・出来ないは全国的問題である。そして、原発の推進をするかは確かに国政上の課題ではある。
ただし、それは原発のある地元の問題ではないあるいは地元が意見してはいけない(この場合の意見は賛成も反対もいずれもである)ということを意味しないはずである。なぜなら、原発を立地すればその分地方自治体の収入が増える可能性がある。これはメリットといえばメリットかも知れないが、それに依存し自ら産業を産んで育てる体力を減ずる可能性もあろう。
また、事故は絶対に100%起きないというものではない。原発を推進しようがしまいが当たり前のことである。仮に潜在的なリスクが顕在化してしまった(=現実に福島を超える事故が起きるなど)として、そのリスクを飲めるかという問題はある。福島はどうやら戻って安全とのことだが、仮にそうだとしても何年も避難生活を余儀なくされた実績があるというのは動かしがたい事実である。この事実は原発事故や現在の彼の地の安全性への立場・評価とは全く関係がない(=福島の海沿いが安全である/安全でないという意見の違いで変わる話ではない)。
「何年も避難生活」というのは、実際に起きたことである。これが小さいリスクのはずがない。そうだとすれば、地元(原発の所在地だけではなく半径30キロ・50キロ以内も含む)で今後原発を推進して共存できるかどうかというのはまさに彼らにとって死活問題ではある。
そうすれば、原発は国の政策であるとはいえ、彼らがYESあるいはNOの意思を示す・考えるのは「おかしい・奇妙だ」といえるだろうか。以前「国の政策に地方が従うのは当然だ」と無限定に唱えるツイートを目にした記憶があるが、そういう方々には「自らが国策によって直接リスクを被る場合になおも主張を維持できるのか」と逆に問いたいのである。
つまり、ここでの結論は「原発とどう向き合うかはこの選挙の争点となるだろうし、そうなったとすればそれはそれで妥当な選挙戦と評価すべきである」ということである。2016年のときもそうだったかもしれないが、地元の将来を考える大事なイベントであるということだ。
近年の選挙動向
小選挙区では与野党それぞれ議席を持っている。2016年の参院選では野党系の森が中原を2000票差で破った。その年の知事選で米山が5ポイント差で森を破った。こうしてみると、野党が勝利するパターンがやや目立つ感じがする。
ただし、国政選挙の比例票の政党別の動向を見ると、与党と野党の割合はほとんど変わらず、与党の自民・公明の票が合計で50%弱の模様だ。これは2014年から2017年にかけて大きく変わっていない。また、最近の世論調査を見ていても、大きく与野党の支持率の傾向が変わっているわけではない。
また、相対的に与党の方が支持基盤が強く野党は弱い。ただし、無党派層は与党<野党で、結局合計の得票で考えると与野党が拮抗する。この構図にも大きな変化が見られない。
現時点での予想
【花角やや先行・池田猛追】
結論
現時点で、参考にした事前情勢調査および過去の選挙結果、出口調査の結果を加味して予想判定を出した。結論は、与党系の花角が一歩リードしそうだが、野党系の池田もかなりの得票を集めそうだというものである。いずれにしろ両候補の得票率が4割を下回る可能性は低く、ハイレベルな争いになるというのが予想である。
また、いわゆる「投票締切直後の当確」である「ゼロ打ち」になる可能性は極めて低いと予想している。今後の選挙戦次第では激戦になる余地がある。
理由
ちなみに、現時点で選挙ドットコムが提示した情勢は「池田・花角横一線」と読み取れる中身だった。選挙ドットコムは一応世論調査で妥当な手法を用いて情勢を探っているのである程度の信用性はあるが、今回は選挙ドットコムより与党に有利な(野党に厳しめ)予想を提示した。その理由は以下の点にある。
極めて参考になるのは、前回の知事選(野党系米山が勝利したとき)の出口調査である。おおよその傾向は以下のとおりだ。
・野党系支持者は米山氏へ。当時民進は推薦しなかったが、民進支持者も大半が流れた。
・3割くらいいた無党派層は3分の2前後が米山氏へ。与党系森氏は3割程度しか集められず。
・森氏が半分ほどいる与党支持層を固めきれず、2~3割が米山氏へ流れた。
これが2016年である。このところの国政選挙の状況や政党支持率を勘案すると、3点目「全体の半分ほどいる与党支持層」はいまでもだいたいその規模になっているということがうかがえる。野党支持層や無党派層もまた然りである(=与党:野党:無党派の構成比が変わってないということ)。
ここで、選挙ドットコムは、今回の調査で「支持政党別に見ると、ふだん国の政治で自民党、公明党を支持していると回答した人の中では花角氏の名前をあげた人が、ふだん国の政治で立憲民主党、国民民主党、共産党、自由党、社民党と支持していると回答した人の中では池田氏の名前をあげた人が突出して多く」としている。
どの程度の割合かははっきりしないところがあるが、与野党がそれぞれの支持基盤を固めていると読み取るのが自然だろう。この点を2016年の知事選の出口調査と比べてみるとわかるのが、
・2016年→与党支持者が野党候補に流れた
・今回→与党支持者が野党候補にいまのところ流れていない
という点である。そうすると、与党支持者:野党支持者:無党派層の構成比がそれほど変わらないという前提に立って考えれば、2016年の知事選より与党系候補が地盤の有権者・組織を引き締めて集票できそうだということが見えてくる。
ここで与党の基盤は4~5割ほど。前回は2~3割が流れたので、10~15ポイント前後の得票が移動する可能性があると読める。そうすると、2016年知事選で米山が5ポイントリードしたのだが、今度は逆に与党系花角が与党系の固定票を固めて2年前とは逆転リードする様子が浮かんでくるのである。
ただ、既に述べたように「ゼロ打ちが出来るほどの差」というものではなく、池田もそれなりに得票を集めることは目に見えている。仮に池田が勝利したとしても僅差であろう。いずれにしろ、立場が鋭く分断された状況が続くことに変わりはない。どちらの候補が当選しても慎重な運営をするほかなかろう。
また、「いまのところ与党票が流れていない」とはしたが、「与党票がこの先絶対に流れない」ということはわからない点も注意が必要だ。現時点での見立てが崩れれば、「池田・花角横一線」の判定に変わるであろうことは付言しておく。
※選挙戦が始まり情勢調査が出たら第2次予想を出す予定・
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